の伝言

 高群逸枝(たかむれ・いつえ)と言って、どれほどの人が彼女を知っているだろうか。彼女こそ女性史の研究家の元祖であり、女性解放と平等・自立への先駆的模索者と言えるだろう。
1999年の9月2日低用量ピルが解禁された。
ピルの解禁が女性の自立や開放に短絡的にはつながらないが、夫婦別姓や事実婚など今日的話題となっているのを見ると、先駆的彼女たちのことを思わずにはいられない。
青鞜社の平塚らいてう、高群逸枝は平成の女性の有り様をどのように感じるだろうか。また、日本で初めての女医の地位を切望し、切り開いた荻野吟子。
彼女こそ性病に生涯を形成されてしまった。わずか17歳の年に。
今回のピル解禁に限って云えば、性の主導権、妊娠の主導権を日本の女性の手の内に創めて握ったといっていいのだろうか。或る新聞社の大学生の意識調査ではピル解禁を喜んでいるのは男子学生であるという。
単純に避妊の役割を女性に押し付けているようだ。
なぜなら、ピルはHIVなどのエイズや他の性病の予防になるという間違った性知識でピル解禁を受け容れている傾向が見うけられるのだ。
性を快楽や悦楽という生殖以外のあり方で持っているのは霊長類の「ヒト」しかいないのだ。しかし、快楽や悦楽を両性の応分のやさしさと理性を持って、交感を分かち合う男女は全体の何割なのだろう。
パンツをその場で思いっきり下げてやりたくなるほどの、少女たちはどれほどの少女が性の営みの時にきちんと避妊を主張できるだろう。
女性たちの現在の娯楽と享楽。
すなわち美味しいものを戴くと称して、豚のように胃に食物を押し込め、恋と愛は自由に交わってこそと称し、使い捨てのナプキンのように、バーゲンセールの買い漁りに似た、手近な浮気。
多くの虐げられた女性たちが牢に繋がれても失わなかった「正当な女の権利」の獲得は無残にも同じ女が100年を経ずして汚していく。
ある1面において、女の敵は女に違いはなかった。