箴言(しんげん)

恋人は夫が妻を守ろうと思う以上に強く彼女に会いたいと願い、囚人は獄吏が脱獄を防ごうと思う以上に自由を願う。だから長い年月の果てには恋人と囚人は必ず思いを遂げるだろう
                    〜スタンダール『パルムの僧院』〜        

麒麟も老いぬれば駑馬(どば)に劣る
 〜戦国策斉策〜

ぼくは新しい倫理を創るのだ。美しいもの、怜悧なるものは、すべて正しい。醜と愚鈍とは死刑である。そうして立ちあがったところで、さて、私には何が出来た。
殺人、放火、強姦、身をふるわせてそれらへあこがれても、何ひとつできなかった。立ちあがって、尻餅ついた 
                      〜太宰治『もの思う葦』〜

私たちは、四方から圧迫されていても窮せず、進退きわまっていても失望しない。しいたげられているが棄てられず、倒されたが敗北したのではない
                      〜コリント人への後の手紙〜

雑魚(ざこ)は群れたがる  〜平塚らいてう〜

この世の名残。夜も名残。死ににゆく身をたとふれば 仇しが原の道の霜。一足づつに消えてゆく。
夢の夢こそ あはれなれ。  〜近松門左衛門『曽根崎心中』〜

機(おり)にかないて語る言(ことば)は銀の彫刻物(ほりもの)に金の林檎を嵌めたるが如し
                      〜『旧約聖書』“箴言”第25章11節〜

「なぜ、私は移ろい易いのです?おお、ジュピターよ」と、美が尋ねた。
「移ろい易いものだけを美しくしたのだ」と、神は答えた。
                      〜ゲーテ『四季』〜 

人間は可憐であり脆弱であり、それゆえ愚かなものであるが、堕ちぬくためには弱すぎる。 
                      〜坂口安吾『堕落論』〜                    

恨みますまいこの世のことは 仕掛花火に似た命 咲いて散る間に 舞台は廻る
まして おんなは なおさらに  〜明治一代女〜