恋人たち
人生の3時のおやつ。モーニングティでもなく、メインディッシュでもない、
とろける甘さか、ゴージャスな高級品かはお好みによるけれど、特別メニューのわたしの甘い時間帯。あなたのおやつは流行りのお店のレアな味?それとも老舗の味?
ただし、間食のし過ぎはただの「浮気なおデブさん」になりますから、お気を付けあそばせ。
すわり心地のいいソファが定席にあって、もたれかかるクッションが密やかな人であったりする。クッションに 身体をあづけて、まどろむ時間は至福の時間。
でもそれは、うたた寝に似たほんのひととき。

刺すと思いっきり痛いような三日月。ゆっくり満ちたりて、想いが溢れる。
あふれて零れ落ちた光が闇の中で見つける翳。そこにいるのは貴方です。
 
秘めた面影がいつの間にかすりかわっている。さようならを云わなくても終わってしまうのが、情事の相手。恋の相手はさようならをいつまでも云わせないずるい人。
暑い夜に飲んだ冷えたワイン。額の髪に白い指をからめてあなたを確かめた夜だった。
恋人はサービス業ね。まめなアクセス、更新しなくちゃ、或る日サイトは閉じられている。ぬるくなった白ワイン、気の抜けたビール、芳醇さを失った日本酒。
さえずりを忘れた恋人達。
愛の48手を極めるよりも、恋の手練手管に凝るよりも、次の1手、49手目を見せてくれる人。
感じたい時にいてほしい人。だから、ねぇって云ったのに抱き寄せるのを忘れる人は失格。
ごめんなさい、わがまま云って。なんて健気な気持ちになるのも恋しているから。
君が欲しい、が「ごめんね」で去っていける人。でも許してあげる恋人同士だったんだから。
あなたがみせる49手目より先に切ってしまった切り札。潔い別れ。
純愛がエピローグの短編小説なら、大人の長編小説は汚れた純愛からはじまるプロローグ。
渡された曲がエンドレスに流れるようになったら、すり込まれたのはメロディじゃなく包みこむシルエット。
貴方が夢で逢いにきた。今夜はわたしが行きます。

紅いルージュを引いて逢っていた幾つもの夜はとうとう明けてしまいました。
恋の夜明けは恋の終わり。恋人たちの別れです。凍てつく冬の空気のように悲しみはフリーズドライされた涙になって胸の奥深くさらさら落ちていきます。
誰にも見えず、誰にも言えない悲しみ。そう、大人の恋だから。good luck