の伝言

 
思い出す曲がある。
恋の余韻・触れた手の温もり・かきむしられる想い・腕の付け根の骨までがバラバラに外れていくような悲しみ・夜と時間と過去を一気に飛び越えてしがみつきたい衝動。だから貴方が好きだったと叫びたい真夜中の迷い。
少女の時も、娘の時も、妻の時も変わらず女で居つづけているやるせなさ。
思い出す曲はいとも簡単に泣きたいほどの甘いフォトギャラリ−を持ち出すのだ。セピア色はこんなにラクチンに文箱から思い出を取りださてくれるのだ。

なんて幸せなのだろう。

誰にも言えない秘めた想いが封印された時間に溢れかえっているのだ。
この悲しさこそが少女からずっと求めつづけていた青い鳥と気づく。
求めつづけ、捕まえらないのではと不安の迷路にさらに求めていたのは思い出させる曲とともに充ちてゆく悲しさなのだ。
幸せは悲しさの中にこそあるのだ。
そう、だから幸せは不安な気持ちと似ている。
永遠に失わない悲しさを見つけているから、夜はやめられない。
時々幸せに逢いに行く時間にふさわしい。